「あらあら、華世ー。赤くなっちゃって、可愛いねー」



赤子をあやすかの様に、私の頭を楓は撫で回してくる。

そして、小さく唸ることしか出来ない私を、更に茶化す。



「普段、無愛想なのに、あんなことをさらっと出来ちゃうのは、やっぱり幼馴染みだからなのかしらねー」

「……分からない」



あまりにも恥ずかしくて、体を支えるのも億劫に思い、楓に寄り掛かった。



「これで華世も、少しは自覚した?」

「ん……?」

「あらら。まだか」



やれやれと如何にも呆れた人が見せる仕草をする楓を、うんざりと見たかった。

しかし、それも残念ながら出来なさそうだ。

ゆっくりと彼女を見上げる。

そんな私に首を傾げた。



「どうしたの?」

「どうしよう。健太くんのこと……」

「お!」

「……結構、好きかも」



そう言いながら寄り掛かっていた私を、勢いよく引き剥がし、何故か熱く抱き合う。



「な、何っ? 」



周りの同級生たちは、きっと私たちのことを騒がしい2人だと思っているに違いない。

それにも構わずに抱擁を続ける楓を、私から一度引き剥がす。



「ちょっと楓、落ち着こう!」

「これが落ち着いていられますか! やっと華世が『好き』って気持ちを理解したんだから!」