「何にする?」
「ホットミルク」
「他は良いの?」
「うん。それだけで良い」
楓は頬杖をつきながら、柔らかく笑い、そう答えた。
私はすぐに、厨房のオーナーへ言付ける。
他のテーブルを片付けたり、オーダーを聞いたりしていた十数分のうちに、ホットミルクは出来上がった。
「栗山さん」
なみなみに注がれたミルクをカウンターから、お盆へと、そっと移していると、オーナーに優しく呼ばれる。
私はミルクに全神経を注いでいたので、ぎこちなく顔を上げた。
「オーダーも落ち着いてきたから、お友達のところで休んで良いよ」
「え、良いんですか」
「行っておいで」
そう言って、微笑むオーナーは、もう1つのホットミルクを用意してくれていた。
「オーナー、これは?」
「栗山さんの分。一緒に飲んでおいで」
「ありがとうございます」
ご厚意を有り難く受け取り、2人分のミルクを運びながら、楓の居る席に向かう。