「怪我は?」

「え? あっ、うん。お陰様で! 無いよ、平気。ありがとう」



恥ずかしくなって、思わず早口になる。

意識しているのは、どうやら私だけのようだ。



「……なら、良いけど」



それだけ言うと、教室のある階へ上っていく。

それに続き、海藤くんもゆっくり進み出した。

そして、一旦踊り場で立ち止まると、私を見下ろした。



「栗山さんも、教室戻るんじゃないの?」

「あ、うん」

「おいでよ」



手招きをされて、私も階段を駆け上がる。



「急がなくていいって。また階段、踏み外すよ?」



海藤くんが笑い出しそうになるのを堪えながら、微笑んだ。

そして、海藤くんのところまで辿り着く。

「気を付けてね」と微笑む海藤くんの顔面をまじまじと見ると、こういう男子がやっぱりモテるのか、冷静になってしまった。

そうして、また歩き出して、前方を行くの健太くんの広い背中が目に入った。

制服のブレザーの布地が張る程の、大きな背中に見惚れた。

不思議と胸が高鳴る。

胸が高鳴っている最中に、先程、健太くんに触れられた腕、支えられた体がじわじわと熱くなってきた。

そして、改めて、ふと思う。

──あれ。私、なんで、こんなに意識しちゃってるんだろう。

ムズムズしている自分の胸に、困惑が隠せない。