「やっぱり、そうだったのかな?」



健太くんが歩いて行った方向を、ぼうっと眺める。

彼の感情が、ちゃんと理解してあげられなかった。

この場からも去られてしまい、物理的にも、気持ち自体も置いていかれてしまって、虚無感に襲われる。



「大丈夫?」



海藤くんが、私を覗き込む。

いつもなら私の体は驚きなのか、はたまた拒否反応なのかは分からないが、その場で飛び跳ねて、慌てて距離を置く。

しかし、今だけは頭の中が、それどころではなかった。

せっかく今日、久しぶりに話せた健太くんに早速、避けられてしまったような気がして、傷付いている。

──可笑しいな。別に私、ただの幼馴染みなだけなのに。

いつまでも、ぼうっとしている私に、海藤くんがもう一度、呼び掛けてくれた時。

遠くからも、私を呼ぶ声が重なって聞こえた。



「栗山さん、本当にだいじょ──」

「華世! おはようっ」



そして、走って迫ってきた、その声の主に、その勢いのまま手を引かれ、海藤くんを1人取り残す形となってしまった。