「あ、そう」
そう言って、健太くんは1人歩き始める。
──急に、素っ気なくなっちゃった。
先程までポカポカと温かかった頬は、少しの温みを残しながらも、通常の体温に戻っていく。
唐突に、淋しくなる。
もともと話す機会も減っていて、今日、偶然たくさん話せただけだ。
だから、そこまで気にすることではないとは思うけど。
肩に掛けた鞄の持ち手を、ぎゅっと握る。
「何してんの」
呼び掛けられ、前を向くと、健太くんがまた私を振り返っていた。
「いつまでも、そこに立ってると邪魔になるから」
淋しさを感じさせた張本人は、何事も無かったかのように、私に手招きをする。
「おいで」
びっくりした。
置いていかれてしまったのかと思った。
健太くんの一言で、胸がじんわり温かくなる。
「えっ、あ、うん」
少し先に行った健太くんの所まで、駆け寄る。
すると、顔を背けて、クッと笑われた。
「どうしたの?」
「……犬みたい」
「なっ! 何それ!」
肩を揺らしながら、笑い続ける健太くんの姿は、正直嬉しかった。
からかわれても、前のように戻れたみたいで、ただ嬉しくなった。
「もう! 相変わらず、健太くんって意地悪だ──」
「はいはい。"健太くん"」
健太くんの肩越しに顔を覗かせたのは、離れた場所に居た筈の海藤くんだった。



