「野球部の練習、やっぱり大変?」



考えた末、部活の話題を出してみたが、これも先程までの質問と、そう変わりがないような気がしてきた。

私も同じ部活に入っているのなら、まだしも、生憎そうじゃない。

「うん」と一言返されて終わるのがオチだ。

反省をして、もう黙っていようと思ったのも、束の間。



「大変だけど、面白いよ」



そう返す健太くんの横顔は、少しだけ微笑んでいる。

思わず、私は2度見してしまった。



「毎日、自分が変わっていってることを実感出来て、面白い」



健太くんは一切、こちらを見ようとしない。

だけど、その視線は真っ直ぐ前を見ていて。

誰にも曲げられなさそうな程に、強い瞳をしている。



「それだけ頑張ってるって、ことだね。すごいや」



すると、健太くんは鼻を擦り「別に」と小さく言った。



「レギュラーは? 取れそう? そういうの、あんまりよく分かんないけど」

「まぁ、まだ1年だし、厳しいと思う」

「そっかぁ……」

「でも、メンバーに入りたいから。もっと気張って、メニューこなすしかないわな」



ひた向きに努力をしている姿勢には、尊敬するしかない。

そして、私との会話を続けてくれたことに、感動した。



「私、応援してるからね」



拳をつくって、健太くんに突き出すと、私を一瞥する。

そして、また小さな声で「おう」と言った。