すると、肩を抱き寄せられ、健太くんの胸にすっぽりと収められる。
温かくて、ほっとする。
心地好さを感じ、ずっとこのままで居たい。
私からも、手を彼の背中へとまわす。
しばらく、このままで居たいのに、そっと肩を押され、引き離された。
健太くんと私の間に、少しだけ距離を作ると、今度は私をじっと見つめる。
それも割と、長い間。
「健太くん……?」
尋ねる様に呼び掛けると、健太くんがゆっくりと顔を近付けてくる。
――これは、まさか。
意を決して、私から瞼を閉じた。
そして、次の瞬間、唇に触れたあまりにも柔らかい感触。
――これが、キス……。
むず痒くて、やっぱり温かくて。
あともう1つは、愛しくなる気持ち。
目を閉じていても、私の肩を抱く彼の掌からは、汗が滲んでいるのを感じる。
唇がゆっくり離れると、私はそっと瞼を上げた。
「……めちゃくちゃ、緊張、してるね」
「――っ。この雰囲気で言う?」
「ごめん。嬉しくって。健太くんが私のことを気遣って、いろいろ考えてくれてることが」
――だから、こんなにも手に汗が滲む程、緊張してくれてるんだよね。
大事にしようとしてくれている気持ちが、ただ嬉しい。
照れる彼の顔は、リンゴの様だ。
「や、やめてよ。格好悪いから」
「格好悪くなんてないよ。そうやって、優しいところが、格好良いんだよ」
私がいくら言っても、照れてしまって、素直に受け取ってくれない健太くんが言った。
「俺は、華世ちゃんに『癒されたい』だけ。これからも、ずっと」