「だとしても、あの健太くんだよ? 幼馴染みで、地元に染まってて、今まで目立たなかった健太くんが、そこまで突然、有名になるものかなぁ」

「華世。それ、蜂矢くんに、かなり失礼だよ」

「だって……」

「あー、その感じだと、華世は観てなかったんだな?」

「何を?」

「あちゃー! やっちまったねぇ!」



楓が、もはや私を面白がっているようにも見えてきた。

私は内実、不安で仕方がないのに。



「地方大会の中継、地元のテレビ局でやってたんだよ。私もスマホで、見逃し配信を観たりしてたんだけど。
とにかく! そこでチームメイトに、はにかむ場面とか、真剣な表情で汗撒き散らしてのピッチングには……。
そりゃ、誰だって惚れちゃうよねぇ」



ニタニタしながら、私を見る楓は明らかに面白がっている。

分かりやすい彼女の詳しい説明に、その映像、情景がよく浮かぶ。

彼の姿を思い浮かべて、ぽっとする頭を振り払った。



「そんな放送やってたの?! 知らなかったから、私、観てないよ。そんなに映ってたの……?」

「そりゃ、ただでさえポジション投手なんて、目立つに決まってるじゃん」

「ええ……。どうしよう。もう、みんなの健太くんになっちゃったんだ」



私はそう言いながら、頭を抱えた。

すると、楓は私を慰めるように、優しく言う。



「まぁ、みんなの健太くんの心が、どこを向いているかは、本人に聞かなきゃ、分からないと思うけど?」



楓の優しい眼差しに、そうかもしれない、と少し揺らぐ。

今度こそ躊躇わず、しっかりと伝えたい。

したい、と思うのだが――。