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「これは一体、何事かな……?」



ある日の朝。

私が登校してくると、野球部のグラウンドに、大勢の女子たちが群がっている。

女子たちは、みんな緑のフェンスにしがみつく様にして、度々、黄色い歓声を上げていた。

何事か、と呑気に考えていた私が甘かった。

各休み時間になると、健太くんの周りは女の子だらけ。

囲まれている当人は、笑顔をきっちり作っているではないか。



「ねぇ、楓。これは、一体どういうことかな?」



少しおちゃらけながら、楓に尋ねてみる。

楓は私のそんな様子に、心底呆れているらしく、頭を抱えた。



「どうもこうも……。地方大会で、ちょびっとだけ活躍してたじゃない。華世の健太くん」

「私の健太くんじゃないよっ。……でも、だからって、ここまで注目浴びるかな……」

「華世にとって、健太くんは近過ぎる関係性だから、気付けないのかしらね。だって、蜂矢くんって、よく見たら爽やかイケメンよ? そりゃ、女子がそれに気付いたら、放って置かないでしょ」

「そうなのかなぁ…….」

「そうなの! だから、私がせっかく急かしてあげたのに。『いつ切り出すの』って」



私の代わりに、何故か悔しがるフリをしてくれる楓。

私も内心では、2人っきりのあの時、勇気をを出しておけば、と悔やんではいた。

そうすれば、伝えることくらいは出来ただろうに。

確かに、1年生でのレギュラーメンバー入りを、思い切り喜んだ。

しかし、だからと言って、こんな展開になるなんて、思いもよらなかったのだ。

もしかしたら、一生話すことすらも、出来ないかもしれない。

悔やんでも、悔やみ切れない。