宛先不明ですが、手紙をしたためました。




辿り着いたのは、あまり使われていない棟の階段だった。

この棟には何かしらの準備室やら、第2理科室や、体育館へと繋がる渡り廊下のような役割も担っている廊下がある程度だ。

それを分かっていても、2人きりの状況を誰かに見られてしまったら、変な噂が立ってしまうのではないか、と辺りをキョロキョロと見回してしまう。



「ここなら誰も来ないから、大丈夫。多分」



私の全てを恐ろしい程、いつも察してくれる。

私の心を見透かしているのではないか、と思うくらいだ。



「ありがとう。気遣ってくれて。でも、私は大丈夫だよ」



そう言って、笑ってみせたが、健太くんはピクリとも笑おうとはしない。

それどころか、少し考え込むような表情になる。



「いや? 大丈夫って顔には、見えないけど」



健太くんの瞳は、揺らがない。

それだけ私の顔が不安定になっている、ということが確かなこととなっているのだろう。

誤魔化せない。



「えー、可笑しいなぁ」



ここまで見抜かれてしまうと、さすがに参ってしまう。

私はいつも通りの笑顔をしっかりと作ったつもりなのに、健太くんは相変わらず全てを見抜く。

健太くんは私の弱々しい笑顔の意味を、どう感じ取ったのか、淋しそうに私を見る。



「……海藤のこと、実は、まだ好きだった?」



それを言う彼の今にも泣き出してしまいそうな表情は、本物のようで思わず、普段は見せてくれない彼の姿に、胸が騒いだ。



「ううん! 好きじゃないよ。あんなに裏側が酷い人だとは、思わなかったから」



この前だって、嫌な思いをしたところを、健太くんが助けてくれたのに。



「何で、そんなこと聞くの?」



素直に出てきた疑問だった。

その疑問の答を少し躊躇いながら、健太くんは話してくれた。