宛先不明ですが、手紙をしたためました。




私が待ち侘びていた筈の人だ。

今、一番見られたくない体勢で居るのに、目が離せなくなる。

健太くんは無言のまま、こちらへと向かってきて――。

ちょうど海藤くんと私の間で立ち止まる。

すると、普段、静かな口がそっと開いた。



「何してんだよ、これ」



その言葉から流れる様に、健太くんは私を見る。

そして、その場に直ぐしゃがみ込み、一緒に紙を拾おうとしてくれた。



「ありがとう。でも、大丈夫だよ」



自分でも驚く程、弱々しい声になった。

情けない。

健太くんも、ただならぬ私の雰囲気を察してくれる。

そして、1つの紙の破片に、健太くんが手を触れようとした。

その瞬間、その手が止まったが、直ぐに拾い上げてくれる。

箇所箇所の言葉が少しずつ見えていて、その切れ端で手紙の内容を読み取られたら、どうしようなどと心配してしまう。

そんな私を気にすることもなく、真剣な顔で集めてくれている。

その横顔に、胸がきゅっとなる。

人任せにしていないで、自分でもちゃんと拾い集めなければ。

海藤くんの足下に落ちている紙切れも、彼を一切気にせずに拾う。

それも、わざと。

海藤くんの方も、それを感じ取ってか、足の爪先の向きを私へと向けた。



「別に栗山さんの為に、言う訳じゃないけど。宝探しに夢中になって、自分の人生、台無しにしないようにね」



それを言うと、直ぐに踵を翻す。

私が顔を上げたときには、海藤くんは既に背中を向けていて、表情を見ることは出来なかった。



「なんだ、あいつ」



いつも冷静な健太くんが、額に青筋を浮かべている。

少し前のめりになっていた健太くんの腕を、私は掴んで止めた。



「今のは、海藤くんなりに気を遣ってくれたんだと思うの」

「気遣いなんて……。海藤にそんなこと、出来る訳ないだろ」