風邪薬を飲もうと考えるも、薬は昨日で切らしたことを思い出す。





(そういえば先輩から連絡あったっけ…)





それは今週一緒に出張へ行く先輩から。



心配だから看病させて。と、

気を遣って連絡をくれたが一度は断った。




出張が決まっているのに風邪が移ってしまったら元も子もないし。





だが、今頼れそうな人はその人しかいなくて。




『すみません、風邪薬だけお願いできますか?』




そう送信しようとした時だった。





ピンポーン…





来客音が鳴った。






(…誰だ?)





心当たりを一つ一つ考えながら怠く重たい身体を動かして玄関へと向かう。



何故かこの時の俺は覗き穴から確認するという仕草を忘れていて、そのまま鍵を開けた。





(先輩?いや、でも家の場所まだ教えてないし)





じゃあ他に誰が─────…




ふっ、と。脳裏を横切ったとある人物。




そういえば、


ここに人をいれたのはあの人だけで


家の場所を教えたのもあの人だけだった。





「はい……っ、!?」





ドアを開けると、それと同時にグワッと一気に開いたドア。



びっくりして声すらも出ない驚きが全身を震わせた。





「泉くんっ…!!!」


「あ、おいさ……」






なんで……いるんだよ。






息を切らしていても


葵さんの瞳にはしっかり俺が映っていた。





揺らぐことなく、真っ直ぐ。



真っ直ぐ俺だけを。