「ケホッ…」





あの日から数日が経った今日、熱は少し下がったものの体調の悪さは未だに残っていた。




……情けない、あんな事で風邪をひくなんて。




まあでも、風邪をひいても仕方がないような事をした自分が悪いんだけど。




びしょ濡れで帰ったあの日、身体は冷えていたのにも関わらず、風呂にはスグ入らずにただただぼーっと立ち尽くしていたから。




考えてたことは────もちろん葵さんのこと。





間違ったことは言っていない。けど、何故か無性に苛立って仕方がなかった。



葵さんから『好き』の文字を聞いた時は耳を疑った。



頬を赤く染めて、まるで本当に俺のことが好きだと言っているように感じてしまったから。





だけど、よく考えてみろ。





葵さんは蒼空さんが好き。


それはもう、目で追うくらいに。


蒼空さんに見惚れてるような、いつもそんな目で見つめてる。



近くに俺がいたとしても


その目には蒼空さんしか映ってない。






『……泉くんのことが好きみたいっ…』






………なのに、なんで。





「俺じゃねーだろ……」






キッチンカウンターに両手をついて顔を俯かせる。




………ああ、もう。頭が痛くなってきた。