「いいじゃん。それで給料貰えるんだし」


「良くないよぉ~…私もみんながしてるような仕事をさせてほしいのに」


「葵さんはやれば出来る人なのにね。誰よりも前向きで、誰よりも努力家で、誰よりも周りを見てる。あの時俺を気に止めてくれた人は葵さんだけだったし。だいぶ力になったのも本当だから。」


「わ…私のこと凄く見てくれてるじゃん…!!褒めたって何もでないのに…!」


「思ってることを言ってるだけだよ」






すると突然葵さんが黙るから何かおかしなことを言ったのかと心配になる。



が、






(……あー…、なるほどね)






葵さんの目線の先を追えば、そこには蒼空さんの姿。



信号待ちで立ち止まっているその姿でさえもなんだか絵になるような、蒼空さんはどこにいても目立つ。






「葵さん」


「っ!な、なに!?」


「確か葵さんって俺と反対方向の電車だよね?」


「うん?そうだけど…?」


「じゃあちょうどいいじゃん。

蒼空さんもそっち方向だし」


「えっ」


「声掛けてきなよ。」


「な、なんで…?」


「なんでって。

好きなんだろ?蒼空さんのこと。
あそこにいるし、今1人だし。

チャンスじゃん」






俺自身は葵さんに良い提案をしたと思ってた。



だって想い人と一緒に帰れるなんて喜ばしいことだろ?