≪結衣side≫




観覧車が下まで降りてきて終わってしまった。

もう少し乗っていたかったなとも思ってしまうくらい貴重な時間だった。


結「大雅兄……。手を繋いで欲しい。」

今日だけ…今日だけでいいから。

私の心はそんな気持ちでいっぱいになった。

すると大雅兄は

大「はぐれても困るからな。」

と言って手を繋いでくれた。



今までだったら嬉しかったんだろう。

でも私の心はもっと独占したい気持ちでいっぱいだ。

自分のそんな自分勝手な気持ちに嫌気がさす。



大「次なんか乗りたい物でもあるか?」

結「うーん。」

乗り物ってよりはこのまま手を繋いでいる方が幸せな気がする、、。

なーんて言えるわけもないから

結「コーヒーカップ…」

と言ってみた。


そうすると大雅兄は無邪気な顔で

大「俺と乗って目回っても知らねーぞ」

と言ってきた。


そのあと、観覧車での出来事が無かったかのように遊び尽くした私たち。







私は毎年クリスマスはお母さんはお仕事で居なかったから1人だった。

ただ1人テレビに映るイルミネーションを見て感じるだけのクリスマス。


でも今年は違う。

好きな人とこうして2人で遊園地に来ている。

本当ならこれだけで幸せな事なのだ。


たとえそれが叶わぬ恋だとしても…。

どうしてこんなにも強欲になっているのだろう。

もっと素直に喜ばないと!!


私は自分に言い聞かせた。









大「結衣…こっち来て!!ギリギリ間に合ったな…。」

結「この広場がどうしたの?」

大「ま、いいから見てなって。」


日も少し暮れ始めた頃、遊園地を出て大きな噴水がある広場まで私を連れてきてくれた大雅兄。





そして時計が17時を回った瞬間…


結「わぁーーー!」

世界がキラキラ輝きだした。

イルミネーションだ。

噴水も水面がキラキラとライトアップされてまるで水が生きているような動きをしている。



高校に入るまで学校以外は基本家に引きこもってばかりでイルミネーションはテレビで見るものだと思い込んでいた。


でもそれが目の前の世界に広がっている。

まるで夢を見ているような気分だ。



こんなにクリスマスが楽しい物だなんて知らなかった。


いつも間にか私の目から雫が溢れていた。


大「お前は本当泣き虫だな。」

結「……そんな事ないもん。」

大「もうあんまり人前で涙見せんなっつっただろ。」

大雅兄はそう言うと私を背後から抱きしめて服の袖でそっと涙を拭いてくれた。


大「前に俺のこと大嫌いって言った時お仕置きするって話したの覚えてる?」

結「う、うん…」

大「それ…今する。だからお前は大人しく抱きしめられてろよ。」



……ばか。

これじゃお仕置きどころかご褒美だよ。

嬉しいし…あたたかい。

私この人を好きになって良かった。


大雅兄、ありがとう。

この気持ちずっと忘れない。


私はその時強く思ったのだった。