≪結衣side≫





秀兄のところから部屋に戻ると大雅兄が私の部屋で待っていた。


大「どこ行ってたの?」

結「秀兄の部屋…」

大「勉強教えてもらっていたのか?」

結「う、うん…。」


やばい。
まともに大雅兄の顔見れない。


大「俺に聞いてくれれば良かったのに。」

結「だって…電話してたから…」


なんで…。

大雅兄はただのお兄ちゃんなのに…。

こんなにヤキモチ妬いてるだなんて……。



大「結衣?どうした?なんかあった?」

結「なんでもない!!もう…勉強するから…出てって。」

大「どうしたんだよ。急に。」

結「お願いだから出てって。」

私がそう言うと大雅兄は部屋を出て行った。


なんでこんな気持ちになっているんだろう。

大雅兄に当たってしまうなんて最低だ。



大雅兄が部屋を出て行くと涙が止まらなくなった。

ずっと一緒にいれると思っていた大雅兄。

もしかしたら卒業と同時に家を出ちゃうとかあるのかな。

今まで側に居てくれてたのにいつかその"なるみ"って人のところに行ってしまうかもしれない。


そんな漠然とした不安が押し寄せていた。







しばらく泣いていると段々と呼吸まで苦しくなっていく。

そりゃそうか。

こんな病弱な奴彼女にしたいだなんて言う方がおかしいんだ。

そもそも妹だし。

勘違いも甚だしい。

どんどん気持ちがマイナスになってしまう。


とりあえず喘鳴が聞こえるし苦しくなってきたから吸入器……

あれ?

出ない。

替えの薬…もない。


はぁ……。もう今日はダメな日だ。


もういいや。

もう嫌だ。 

こんな気持ちになるのも
こんなに体が弱いのも…。

全部。全部。もう嫌だ。



琉生お兄ちゃん起きてるかな。

薬だけもらえたりしないかな。

そんなの無理か…。

きっとまた痛い事されるに決まっている。


このまま静まるのを待とう。

横になると苦しいからとりあえず座ったまま……

でも…やっぱり苦しい。


早く治れ、早く治れーっと思えば思うほど焦りで苦しくなる呼吸。


とりあえず今日は横になれそうにない。

少し寒いし辛いけど座ったまま寝よう。


私はそのまま目を閉じた。








朝になった。


喘息はすっかり良くなったけど…体が重い。

また風邪ひいたかな。

でもいい。

これくらいが。

私は自暴自棄になっていた。


いつも通り朝食を作りお弁当を作り学校へ行く。

少し具合悪い方が無駄な事を考えなくて済む。

そう思い私はそのまま放置していた。



キーンコーンカーンコーン。

そしてそのまま何も考える事なく放課後になる。


大「結衣、帰るぞ。」

そしてこれもまたいつも通り大雅兄が教室へと迎えにくる。


結「今日寄るとこあるから先帰って。」 

大「なら俺も一緒にっ」

結「大丈夫。」

今日も変わらず優しい大雅兄。

でもこれは妹だから優しくしているだけなんだ。




私はあれからずっと大雅兄と目を合わせられていない。

そして私が逃げるように大雅兄の横を通り過ぎようとすると大雅兄は私の腕を強く掴んできた。



やめてよ。

もう私に触らないで。




大「待てよ。…俺お前になんかした?」

結「してない…。」

大「ならなんだよ。その態度。なんで昨日からずっと俺のこと避けてんの?」

結「……させないでよ。」

大「は?」

結「これ以上私に期待させないで!!」


私は大雅兄の手を振り解くと走って家に帰った。

いつも私に優しい大雅兄。

なのになんでこんなこと言ってしまうんだろう。

でも…優しくされればされるほど、助けてもらえばもらうほど…どんどん好きになっていってしまう。

他に女の人がいるなら優しくしなきゃいいじゃん。

触らなきゃいいじゃん。

構わなきゃいいじゃん。

観覧車でもキスだって……


私はなんでこんな醜い気持ちばかりが出てきてしまうんだろう。