≪秀side≫


コンコンと鳴り響くノック音。

俺はドアを開けた。


結「秀兄…勉強教えて欲しいんだけど…」

秀「いいよ!どこが分からないの?」


勉強を聞いてくるなんて珍しい。

それに少し元気がないように見える。








秀「ここは……こうするんだ。」

結「そっか。ありがとう秀兄。」

秀「いいえ~!で……なんかあった?元気ないけど……」

俺がそう尋ねると少し顔を曇らせて結衣ちゃんは首を振った。

明らかに何もないという顔ではない。


秀「何もないならいいけど。いつでも話は聞くから。」

結「うん。大丈夫だよ。ありがとう!」




すると部屋に今度は兄貴が入ってきた。


琉「秀…明日なんだけどさ。あ、取り込み中だったか?」

結「あ、ううん!もう私は用事済んだから部屋に行くね!秀兄勉強教えてくれてありがとう!」

と言って出て行ってしまった結衣ちゃん。


琉「なんか邪魔したな。」

秀「いいよ。俺には話したくないみたいだったし…」

残念だけど…きっと本当に頼りたいのは俺ではないんだろう。


琉「明日、夜勤になった。だから…」

秀「戸締りと、結衣ちゃんの喘息が出ないかよく見ておいて……だろ?」

琉「あ、ああ。」

自分が見れない時はいつもこうだ。

たしかに結衣ちゃんは我慢強く人にあまり頼ってくる子ではないが……


秀「結衣ちゃんだって子供じゃない。別にこっちが気にしてやらなくても…」

琉「ダメなんだ…。人に頼るのが苦手な奴は絶対いつか手の届かない存在になってしまう……。もうあんな思い…したくない。」


兄貴はずっと未結さんを引きずっているのだ。

その気持ちは分からなくもない。

自分がもし話を聞いていたら。

もっと気にかけてあげられたら。

そんな事ばかりを気にしている。


でも……

秀「結衣ちゃんは未結さんとは違うよ。」

琉「分かってる…分かってるけど……」

秀「それに…結衣ちゃんは強い子だから。大丈夫だよ。とりあえず明日はよく見ておくようにするよ。」

琉「悪い…。寒くて乾燥している時は風邪を引きやすい。それに…暖房の効いてる部屋から急に寒いところに出ると……」

これは兄貴の悪い癖だ。

異常なほどの結衣ちゃんへの心配症。

困ったもんだな。