≪大雅side≫





ブーッ…ブーッ…

ポケットから聞こえるバイブ音で目が覚めた。


頭がものすごく痛い。

そしてここは何処だろうか。


縛られた手足。

やられた。


一瞬でそう思った。

さっきから携帯…ずっとなっている。

どうにかポケットから取り出せないだろうか。


頑張って見るけどなかなか難しい。

どうにか携帯についてるキーホルダーでも引っ張れたら……





しばらくずっといじっているとなんとか取り出せた携帯。





すると再びかかってくる電話。

俺は体勢を変え、電話に出てスピーカーにした。


結『大雅兄!?出た!!良かった!!今何処?』

結衣の声だった。
走っているのか息がだいぶ上がっている様子。


大「分かんねぇ…動けねぇんだ。」

結『私のせいで…ごめん…。』

電話越しに泣いているのがわかる。


大「体育館から…ライブをしている音が遠めに聞こえる…。暗いから何処か倉庫ではあるけど何処かは分からない。」

結『倉庫……分かった!!このまま繋げて置いて!!』

大「繋げておくのはいいけど…お前あんまり走るな。喘息ぶり返すぞ。」

結『分かってる。けど……ダメ。私のせいだもん。

そう言って走っている様子の結衣。


……バカか。こいつは。

なんで俺なんかに一生懸命になってるんだよ。





それから少し経ったくらいだった。


ドンドンドンと戸が叩かれる音。

結「大雅兄いる!?」

大「おう。」

結「鍵がかかってる……」

大「なら無理せず…誰か大人を…」

と言いかけた瞬間バンという大きな音と共に倉庫内が一気に明るくなった。


大「……っ!?」

結「鍵がかかってるけど頑丈には出来て無さそうだったから……」

倉庫のドアを壊した事もそうだが……

大「結衣…その怪我…。」

結「え?」

大「頭から血が出てる…」

結「あ…とりあえずロープほどくね。」

俺が心配しているのを無視してロープをほどいてくれる結衣。


大「わりぃ。迷惑かけたな。女だからって油断した。」

結「んーん。全部私が悪いの。大雅兄もあちこち怪我してる……。琉生お兄ちゃんと太陽さんも来てたから一応連絡するね。」

大「ありがとな。」


それからしばらくすると太陽くん、琉兄、秀兄…そして何処から聞きつけたか知らないけど人が集まってきた。


琉「結衣!我を忘れて駆けつけるのはいいが探す前に連絡をしろ!!そして怪我してるのに無理をするな!!」

そう結衣に怒鳴る琉兄。

太「まぁまぁ。無事だったんだからいいじゃん!」

と宥める太陽くん。





琉「とりあえず2人を俺の車で病院に運ぶ。太陽、秀手伝ってくれ。」

秀「分かった。」

太「了解!」



結「私は大丈夫……」

琉「これは決定事項だ。大人しく言うことを聞け。」

結「はい…。」

珍しく怒っている琉兄と怒られている結衣をみて少し微笑ましく感じる。


でも結衣も病院に一緒に行けるなら安心だ。


太「ほら大雅、動けるか?」

俺は頷くと立ち上がるが未だにグワングワンと揺れ動く視界にすぐに膝をついた。


太「ダメそうだな…。秀肩貸してくれねぇか。」

太陽くんがそう言うと2人で俺を担ぎ運んでくれた。


琉「ほら。結衣も。」

結「わっ!私は1人で歩けるよーっ!」

琉「動くのは良くない。じっとしてろ。」

と言って琉兄は結衣をお姫様抱っこし始めた。




秀「じゃあ…あと俺は後始末とかあるから。」

太「サンキューな!」


こうして俺らは病院へと運び込まれていった。