≪大雅side≫






4時間目の授業中だった。

担当は秀兄。

突然鳴り響く携帯のバイブ音。


携帯を見ると結衣からの電話だった。



大「ちょっとトイレ!」

秀「おい!大雅!授業中だぞ!」


大「緊急だから無理!!」

俺は急いで教室を出た。




大「もしもし…」

結『大雅……ゲホゲホ…兄…』


咳でまともに喋れていない結衣。
確か今日あいつは学校休みだって言ってたよな。


大「結衣?!」


結『……いたい。ゲホゲホ……』

痛い?また誰かに殴られたか?
俺の心臓は高鳴った。



大「どこが痛いんだ?大丈夫か?」

俺がそう聞くと今度はハッキリとした声で


結『大雅兄に……会いたいっ。』

と言ってきた。



俺は急いで学校を飛び出した。

結衣がそんな事を言ってくるなんて初めてだ。

きっと何かあったに違いない。

一昨日の夜助けた時も様子がおかしかった結衣。

絶対何かあったんだ。



ここだ。結衣の家。

インターホンを何度も押しても出る気配がない。

家じゃないってことか?


俺は急いで結衣に電話をかけた。


出たけど何も喋れなさそうな様子。

電話を繋げたままもう一度インターホンを押すと、電話越しにインターホンの音が聞こえた。

やっぱり結衣はこの家にいる。



俺は鍵をこじ開けた。


大「結衣!!!」

タバコくさっ!!
おばさんここで普通にタバコ吸ってたのか?

そりゃ結衣の体調も悪くなるわけだわ。


すると

とある部屋から咳き込む声が聞こえてきた。


大「結衣!!」

結「大雅……兄……。」

感極まったのか泣き出す結衣。

大「もう大丈夫だかんな。よく頑張った。」

結「あり…がと。……きてくれて。」


何馬鹿な事言ってんだよ。こいつは……

当たり前だろ。



俺は結衣を抱えて急いで琉兄が働く病院へと連れて行った。

大「少し走るから揺れるけど我慢しろよ。」

















太「ひどい熱だね。それに……」

琉「あぁ…多分肺炎だ。」

太「X線準備する。」


バタバタと忙しそうにしている2人に俺は自分の事に必死になっていた。

琉「ほれ。お前も喘息持ってるんだから無理しちゃダメだろ。」

そう言ってすぐに吸入器を用意してくれた琉兄。

大「わりぃ。」

琉「全く…お前らは……」

大「あ、そういえば…結衣がいた部屋…かなりタバコ臭かった。」

琉「はぁ…あの母親か…分かった。教えてくれてありがとな。」




俺らが話していると


看「先生!!矢神さんが…」

突然焦った様子で来た看護師。


急いで行ってみると…


結「離して…帰らなきゃっ!!」


大「結衣…?」

琉「結衣体に障る。一旦落ち着け。」

何かに取り憑かれたように暴れ狂う結衣。

結「やだっ!ここにいたら怒られちゃう!!おうち帰る!!!」

琉「誰に怒られるんだ。落ち着け!!」

俺の琉兄で押さえつけても尚暴れようとする結衣。



しばらくその状態が続くと太陽くんも駆けつけた。

太「何があった?!とりあえず鎮静剤!!」

看「はい!!」

太「結衣ちゃん大丈夫だから少し横になろうな。」

そう言って無理矢理結衣を横にする太陽くん。

結「やだっ!離して!!」



看「持ってきました!!」

太「琉生!大雅!少し強めに押さえてろ!結衣ちゃん、ちょっとチクッてするけど我慢な。」

結「やめてっやだーっ。」


鎮静剤を打つとすぐに落ち着いた結衣。


一体なんでこんなことになってしまったのだろうか。


何が結衣をこんなに苦しめているんだ。