≪琉生side≫





太「ふーん。……で、結衣ちゃんが出て行っちゃって落ち込んでると。」



琉「落ち込んでるなんて言っていない。」


太「どう考えても落ち込んでるだろ。お前が一緒に飲もうだなんて珍しい。」


琉「お前だってそーゆー気分の日くらいあるだろ。」


そう言って俺はグラスに入ったウイスキーを一気に口に含んだ。

太「飲み過ぎだって。」

琉「ほっとけ。」


その日は久しぶりに多量の酒を飲んだ。



俺は結衣が家を出て行ったこと。
ずっと引っかかっていた。

だが俺にはどうすることも出来ない。

むしろ血の繋がりがない俺らよりも母親といた方があいつは幸せなのではないか、と思っていた。


そんな結衣の幸せを奪ってまで一緒にいようとするのは身勝手極まりない。






家に帰っても、もちろん結衣の姿はなくシンとしている。

秀、瑛斗、大雅もここ数日で口数が一気に減った気がする。


こんな時、結衣の偉大さがよく分かる。


結衣は我が家で唯一の華だった。


 
いつも笑顔で、優しくて。

でもとても強くて真っ直ぐで。

時々ドジな少し目が離せない存在。



そんなところも未結に似ているとさえ思ってしまう。




太「ほら!水。」

琉「わりぃ…」

太「飲み過ぎだ。アホ。」

と言って水の入ったペットボトルで俺の頭をポンと叩いてきた太陽。


太「お前らは本当不器用だよな。」

琉「どーゆー意味だ?」

太「会いたいなら…離したくねぇなら…そう言えばいいじゃん。世の中言わなきゃ伝わらない事ばっかりだぞ。」


太陽が言ってることは間違いではない。

でも言ったところで困らせるのは分かっている。



元々は母親と2人で暮らしてたんだ。


何度もぶつかったり、俺らといるせいで怖い目に合わせたことも多々あった。


今の結衣には今の幸せの方が大事なんだ。