≪真央side≫



紗「これは何かのパフォーマンス?」

足から血を流し、お腹にカッターが刺さった状態の結衣を見て紗希がそう言った。

大「んなわけねーだろ!!」


大雅がそう言った時、ウチは全てを察した。


結「あ…違…これは自分で……」


その時結衣は慌ててそう言っていた。
でもその時みんなが思っただろう。

(嘘が下手すぎる)と……



でもウチは結衣らしいとも思った。









ウチと紗希がつるんでいると声をかけてくるやつは居なかった。

それが当たり前だと思っていた。


今通っている学校は真面目な奴が比較的多い。

喧嘩ばっかりしているウチらは先生にも目をつけられ、学校の恥だと言われていた。

そんなウチらは出来れば絡みたく無いと思う人が多数だろう。



そんなウチらはその日も体育の授業をサボって中庭にいた時だった。


結「あ、危ない!!」

こっちに向かってくるサッカーボール。
それを止めようとしたのか結衣が寄ってきてそのボールを顔面で受け止めた。

結「いったたたた……2人とも怪我は……」

自らの顔面にボールが当たったのにも関わらずウチらを心配してくる隠キャ。


それがウチらと結衣との出会いだった。




紗「馬鹿か?コイツ。」

少し引き気味の紗希。

でもウチはツボにハマっていた。

真「ダッセー!そこキャッチするんじゃねーのかよ!」


助けたつもりだとしたらダサすぎる。

でもウチらを助けたり声をかけてくるやつ滅多に居なかったから嬉しかったのを覚えている。

それと同時にぐるぐるメガネを外した結衣の顔を見て、こいつは何か他の人には無いことを抱えているんだと思った。


それからしばらく絡むことはなかった。











久しぶりに現文の授業に出た時。


先「じゃー次の文を葛城(かつらぎ)読め。」


ウチが指された。

真「教科書なんて持ってるわけねーじゃん。」

先「はぁ…お前勉強する気あんのかよ。誰か葛城に教科書貸してやれ。」

センコーがそう言った瞬間静まり返る教室。

どうせうちなんかに教科書を貸したいやつなんて居ねーよ。なんて思った時だった。


結「このページの11行目です。」

そう言って唯一貸してくれたのが結衣だったんだ。

読んでビックリ。

先「読むのは2行先だ。」

結「あれ?1.2.3.4.5.……あ、13行目だ…」

真「お前って頭は良いけど馬鹿だな。」


優しいけど間抜けなやつだった。


でも優しくて…馬鹿で。

そんな結衣だったからキャラは違うけど仲良くなれたんだと思う。








そんな結衣が庇おうとしてるんだからウチらが殴りかかることではないと思った。

真「結衣がそう言うならウチらは何もしねぇ。でも困った事があったらなんでも言えよ!」

ウチがそう言うと結衣は笑顔になり

結「真央ちゃん、紗希ちゃん!ありがとう!」

と言った。




自分は怪我をしているのにウチらに笑顔でお礼を言うとか……。


本当、こいつはバカだよ。