≪大雅side≫




仕事がまだ残っていたのにも関わらず結衣をすぐに探しに行った琉兄。




結局、琉兄から結衣を見つけたからそのまま家まで送り届けると連絡が来た。



太「じゃあ琉生戻って来たら俺らも帰るか!」

大「う、うん……。」


なんか悔しい。

結衣の気持ちが俺から離れて行くような気がしてならない。

太「大雅もあんまり思い詰めるなよ?」

大「分かってる。」


でもなんか…

なんか俺にしてあげられることはないのか…。

今までは結衣の側にいる事が出来た。


だからこそ結衣の行動パターンも読むことができた。

でも今は違う。

学校がまた始まれば側に居られなくなるし…。

結衣の変わっていく心情や行動について行けていない自分がいる。




でも……。


大「ねぇ。太陽くん。」

太「んー?」

大「打ち上げ花火を見に行くのは難しいとしても離れた場所とかなら大丈夫だよね?あとこれなんだけど…」


俺は調べておいた携帯のディスプレイを見せた。


太「おぉ~これなら気をつければ出来るんじゃね?これから一緒に探しに行って今日やるか!」

大「本当?やったー!」

太「にしても…煙が少ない手持ち花火か…。今はこんなのあるんだなぁ。」


大「なんか結衣にしてあげたくてさ。調べてたんだ。」

俺がそう言うと太陽くんはニヤリと笑みを浮かべた。

太「一途だなぁ。」

大「……うっせぇ。」

太「なんだとー!?」


太陽くんと俺がそんな会話をしているとそれから間も無くして琉兄が戻ってきて、俺らは病院を出た。


そしてそれから一緒に花火を探しまわってから駅に送ってもらい

俺はそそくさとバイクを取りに行くとすぐに帰宅をし、太陽君と合流した。


太「おぉ!思ったより早かったな。」

大「すっ飛ばして来た!」

太「事故るなよ?」

大「大丈夫だって!」

太「じゃあ俺リビングで待ってるから、結衣ちゃん誘っておいで!」

大「おう!」


俺は結衣の部屋の前に行くとノックをし、結衣の部屋に入った。


ベッドに横になり不貞腐れたように布団もかけずに寝ている結衣。


大「無防備だな…。」

結「ん…大雅兄……」


俺の言葉にそう言って起き上がる結衣はついさっきまで泣いていたのか目が腫れ上がっている。


俺は咄嗟に見せようと思っていた、手持ち花火を背中の後ろへと隠した。



大「あのさ…花火の件なんだけど…」

俺がそう言いかけたとき結衣の顔つきが少し変わった気がする。


結「何?もう放っておいてよ!!」

大「そうじゃなくてさ…!」

結「大雅兄に……」

大「ん?」

結「大雅兄に今の私の気持ちが分かるわけない!!」


そう言って部屋を飛び出して行ってしまった結衣。

きっと結衣の花火大会の件で俺が勝手に断ってしまったのを怒っているのだろう…。


それは分かるけど…。


俺だって結衣の気持ちは考えてる。


喘息だから出来ないことが多い辛さや、発作が起きた時の辛さ、何もかも俺には分かる。


なのに……。



大「んだよ…。」


俺は結衣のために買ってきた花火を見て床に投げつけた。


なんで分かってくれないんだよ…。

 
俺は…結衣にただ…笑っていて欲しいだけなのに…。