≪榊side≫


俺は夏休みを満喫していた。

と言っても特にすることはなく、独り身だとどこか出かける事もなく…。

過ぎていく日々を何もせずに生きているだけ。


どうせならば仕事をしていた方がやる事があってまだいいのかもしれない。


そんな事を考えていると携帯がなった。


ディスプレイを見ると電話をかけてきたのは結衣様のようだ。


榊「もしもし。」

結「……。」


出てみても何も喋ろうとしない。

……間違い電話か?


榊「もしもし。」

念のためもう一度確認してみたけれど…

返事は来ない。



間違い電話に違いない。


俺は電話をプツリと切り、コーヒーを淹れた。


彼女は夏休みを楽しんでいるのだろうか。

そんな事を考えるとなんか胸騒ぎがしてきた。

今のは本当に間違い電話だったのだろうか。


本当に意味のない電話だったのだろうか。



やっぱりもう一度かけ直してみるべきだ。


俺は再び電話をかけ直した。


だが、何度かけても電話は出ない。


さっき電話をかけてきてからそんなに経っていない。

だとすると携帯が手元にない可能性は低い。

いや、トイレとかなら話は別だが……。



でもやっぱり一度家に行って確認してみよう。

俺は私服のまま飛び出し車を走らせた。

もし違かったらそれはそれでいい。

でも万が一のことがあれば俺はきっと後悔するだろう。



あんなに気立がいい子他を探してもなかなかいない。

そして車を走らせること10分で到着した矢神家。


とりあえずまずインターホンを押す。

それでも誰も出て来る気配はない。

俺は預かっていた鍵で玄関を開けて中に入った。


働かせてもらっているとはいえ下手したら不法侵入。


確認だけしたらすぐ帰ろう。


俺はすぐに結衣様の部屋へ行きいないのを確認するとリビング、キッチンの順番でまわった。


キッチンを見ても誰も居ない……って。


なんでこんなところに椅子?


そしてその横を見ると…



榊「結衣!!」

結「……。」


そこには結衣が倒れていた。












すぐに俺は脈拍の確認、そして頭を打っていないかどうか確認した。

どうやら頭を打って意識を失っているようだ。

それにしても…身体が熱すぎる。


熱でもあるのか?


熱があるのになぜ1人でいるんだ?

なぜこんなところにいるんだ?


色々と疑問点はあるけど……。

とりあえず頭を打っている以上救急車を呼んだ方がよさそうだ。



俺は急いで救急車を呼び、この家の長男が働いている病院へ運ぶよう指示をした。