≪秀side≫


外も薄暗くなった頃、一緒に帰る俺と結衣ちゃん。


結「ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかなぁ。」

秀「たまには良いじゃん!」

結「うん!とっても楽しかった!」

秀「俺は結衣ちゃんが元気になって本当に良かったよ!」


俺がそう言うと結衣ちゃんは笑顔でお礼を言った。


秀「どう?たまには歩いて帰るのもいいだろ?」

結「うん!最近榊さんの車ばっかりだったからなぁ…。」

秀「そうだね。」

結「でも…秀兄がバスケあんなに上手だったなんて意外だった!!」

そう笑顔で言う結衣ちゃん。

俺は作り笑顔をした。




秀「高校の時バスケ部のキャプテンだったんだ…。若き頃の英雄ってやつかな。」


俺が少し低い声でそう言うと結衣ちゃんは明るい声で応えた。

結「やっぱり!!すごいの度を超えてたもん!!」

そう言う結衣ちゃんはとても明るくキラキラ笑顔だった。


結「あんなに上手だったらプロにもなれちゃいそうだね!!」

秀「プロか…目指してたんだけどね。」

そう…。

バスケ部キャプテンだった俺は色んなところからスカウトも来ていてプロを意識していた。

怪我をするまでは。





俺はその時の事がフラッシュバックした。





大会前だからといって少しだけ痛む足をそのまま放置して気にも留めず、毎日無理して練習に励んでいた。



我慢できるほどの痛み。



いつか治るだろうと甘くみていた。


大会前日までは…。







それは今まで貯め続けた痛みが爆発したような痛み。


そして貯めたことによって完治は程遠いと言われる始末。


そのせいで俺は夢を諦めた。















結「でも…秀兄が学校の先生で良かった!!」


秀「え?」

結「だって秀兄めちゃくちゃ授業面白いし、分かりやすいし…。秀兄がもし選手だったら…それもかっこいいとは思うけど…同じ兄妹になれたとしてももっと遠い存在だったんだろうな…。」


そう遠くを見つめながらも楽しそうに話してくれる結衣ちゃん。


たとえそう思ってくれるのは結衣ちゃんだけだとしても俺はなんか嬉しかった。




秀「そうかもね…。」

結「あ…ごめん。不謹慎だよね。」


と突然謝りだす結衣ちゃんに俺は笑って応えた。



秀「ううん。結衣ちゃんがそう言ってくれるなら教師と言う選択も悪くなかったかなって思うよ。」



どちらかと言うと…

プロのスポーツ選手になりたいだなんて笑われるような話かと思っていた。


それなのになぜか俺は結衣ちゃんに話していたんだ。


結衣ちゃんは人の夢を笑って聞くような人じゃないし、きっと優しい言葉をかけてくれるんじゃないかって心のどこかで期待していたのかもしれない。




結「じゃあ今度から勉強だけじゃなくてバスケも教えてもらっちゃおうかな!」

秀「お!勉強は優しくてもバスケに関しては厳しいぞ!?」

結「お、お手柔らかにお願いします…。」


そんな話をして笑い合い帰宅したのだった。