≪結衣side≫




太・秀「結衣ちゃん!!!」

そう言ってくる2人は顔を真っ赤にして怒っていた。


結「ごめんなさい…。でも…」

太「でも…じゃない!!一体何を考えてるんだ!!」

秀「どんだけ心配したと思ってるの!!」


普段怒らない2人が怒るとめちゃくちゃ怖い。



にしても…初日で見つかってしまうとは……。

お母さんのお家から出なきゃ良かったな…。


琉「おい、結衣。こっちこい。」

私はものすごく怒っている顔の琉生お兄ちゃんに呼び出され空き診察室へと連れて行かれた。


琉「結衣…お前は一体何がしたいの?」

結「家を出て行きたい……です。」

琉「そうか。なら勝手にしろ。住むところは…俺が保証人でもなんでもなってやる。」


琉生お兄ちゃんは冷たくそう言った。

……仕方ない。

大雅兄まで巻き込んでおいて…

みんな私のことを探して…。


迷惑ばっかりかけて…。




こんな人間…嫌われて当然だ。




琉「でも一つ覚えておけ。」

結「……。」

すると身長の高い琉生お兄ちゃんは私の目線までしゃがむようにして私の顔を覗くと続けた。


琉「お前は俺たちの大事な妹なんだ。家族なんだ。だから心配だってするし、なんかあるなら助けてやるつもりでいるんだ。」

琉生お兄ちゃんは優しくそう言った。


なんで優しくするの…。

こんな人間…。



家族だって言っても…琉生お兄ちゃん達とは血は繋がってないじゃん。

私は大雅兄を事故に遭わせたんだよ。

迷惑しかかけてないんだよ。




そんな罪悪感でいっぱいの時に優しくされるのって辛い…。

いっそのこともっと見放してくれればいいのに…。


私は琉生兄がそう話している間、何も言えずに黙り続けていた。



その後私は診察室から出てまた1人で病院近くの公園に行った。


1人でブランコに腰掛ける。

すると…


瑛「また逃げ出す気か?」

後ろから声をかけてきた瑛斗兄は私の横の空いていたブランコに腰掛けた。

結「……逃げないもん。」

私が下を向いてそう言うと

瑛「そっか。」

と瑛斗兄は言った。





結「瑛斗兄今日お仕事は?」

瑛「久しぶりの休み。ずっと家開けてたらこれだもんな。」

結「……ごめんなさい。」




瑛斗兄はただ横に座るだけでそれ以上何も言わなかった。

ただ…私の心にそっと寄り添うようにずっとそばにいてくれた。









しばらくそのまま座っているとやがて公園は小学生がたくさんやってきた。

瑛「そろそろ戻るか?お前も疲れただろ。」



結「私は…」

……まだ戻りたくない。

できるだけみんなの顔を見たくない。

それが正直な答えだった。

私は何も言わずに下を向きブランコを握りしめる手に力を込めた。





瑛「あんなに明るくて真っ正面からぶつかってきたお前がここまでになってるんだから相当思い詰めてるのは分かるよ。」

そう言いながら瑛斗兄はしゃがみ私の顔を真っ直ぐ見てそう言った。



結「……。」

瑛「でもな、逃げちゃいけない時もある。どうしても辛くなったら愚痴でもなんでも聞いてやるから。」



結「私……一人暮らしがしたい。今のお家…出て行きたい。」

私はそう言った瞬間涙が止まらなくなった。






瑛「それはどうして?」

結「怖いの。また誰かを傷つけてしまうんじゃないかって…。私は何の価値もない人間で…。そんな私が…夢のある人やみんなに必要とされる人達を傷つけるのは…もう嫌だ。」

瑛「それだけ?」

結「え?」

瑛「必要とされる人…ねぇ。俺も別に誰かに必要とされているとは思わねぇけどな。」

結「なんで?だって…瑛斗兄は今大人気の…」


瑛「外見はな…。じゃあ俺がとんでもないくらい太ったら?それでも好きでいてくれる人は居ると思う?」


結「0ではないと…」

瑛「……でも大半は俺のことここまで支持はしてくれないだろうな。お前は幸せじゃんか。素でいるのにこんなに心配してくれる人がいるんだから。本気で守りたいって思ってくれる人がいるんだから…」


そう言ってくる瑛斗兄はどこか寂しそうな顔をしていた。


瑛「助けてもらったら…“ごめんなさい”ではなく“ありがとう”だろ?助けてもらったら消えて居なくなるんじゃなくて、それ以上に自分が返せる最大限の事を探してみるとか…できる事は他にあると思うよ。」


結「瑛斗兄……。」


瑛「なーんて、今の台本のセリフなんだけどな。じゃ、俺行くわ。」






そう言って少し照れたように行こうとする瑛斗兄に私は大きな声でお礼を伝えた。



結「ありがとう!!」

すると瑛斗兄はこちらを振り向いて


瑛「やっとお前らしくなってきたじゃん。」

と笑って行ってしまった。