≪大雅side≫


俺はずっと真っ暗闇の中にいた。右も左も分からない。

俺は死んだのだろうか。


結衣はちゃんと助けられたのだろうか。


ちゃんと助けて死ねたのなら本望だ。


真っ暗闇をずっとひたすら歩き続けた俺は小さく光る何かを見つけた。

ずっと真っ暗闇の中だったからその光はとても眩しかった。


やっと見つけた希望の光。


俺はその光の方へ走って行った。




するとたどり着いたのはとても心地の良い川沿い。


大「ここが三途の川ってやつか?」

向こうの岸からは色んな人の楽しそうな笑い声が聞こえる。

そしてすぐそばに一本の橋を見つけた俺。


これを渡れば……。






その時だった。









「来てはダメよ!!」








聞き覚えがある声……。









大「か、母さん……っ」








母「来てはダメよ、大雅。」


大「なんで……。」


母「貴方にはまだやるべきことがあるでしょう?」


大「やるべき…こと?」


母「そうよ。」



大「でも俺…充分やったよ。頑張ったよ。母さんが居なくても……」


母「ええ。そうね。でも…妹が悲しんでる。貴方がこちらへ来たらきっとあの子はすぐに跡を追ってくるわ。それでもいいの?」


大「結衣…が…?俺の跡を…?」


母「そうよ。だから戻って幸せにしてあげなさい。貴方がここにくるのはまだ早いわ。」


大「母さん…俺…。」


母「大雅…苦労ばかりかけてごめんね。寂しい思いばかりさせてごめんね。私はずっと貴方の味方よ。」


母さんはそう言って微笑んだ。



大「ありがとう。母さん……っ」


母「そうだ!貴方と彼女、とてもお似合いだと思うわ。幸せにしてあげてね。」


と言って無邪気に笑う母さんはガキの時俺と遊んでくれた時のような笑顔だった。


俺は母さんの示す方へ走った。


訳がわからなくなるほど。






走って走って……走りまくった。































大「………っ」


目を覚ますと真上には真っ白な天井があって、色んな機械音が聞こえてきた。


結「大雅兄……!?」


結衣……泣いてる。

体のあちこちが痛ぇ……。


俺は重たい手を持ち上げ結衣の涙を拭った。


結「大雅兄…大雅兄……っ」


結衣の高い声が耳に響く。


俺は顔をしかめた。




すると結衣の声で太陽くんも駆けつけてきた。

太「大雅…!!良かった…。」

泣いている太陽くん。


太陽くんだいぶ前から知ってるけど…

泣いてるのはじめて見たかも。



太「すぐに担当の医者呼んでくるな。」


そう言って太陽くんは行ってしまった。