≪秀side≫


帰ってきて早々に榊さんに怒鳴りかかった大雅を見て驚いた。

俺たちは誰一人として榊さんにここまでは言わなかった。

それは大人だからなのだろうか。

いつしか大人になり、口頭で簡単に言って済ませてしまう。

怒ることはあっても怒鳴ることはほとんどない。


大雅の真っ直ぐぶつかる姿が不覚にもかっこよく見えた。


結「大雅兄っ」

大「殴りはしねーけど…ムカつくんだよ。俺じゃまだ守りきれない。情けねぇけど…こいつが苦しんでる時は見てる事しかできないんだよ。俺は。」

榊「……」

大「俺が絶対お前に負けねぇくらいこいつを守れるようになったら絶対に結衣を迎えにくる。だからそれまで…俺に時間をくれよ。優しくしてやってくれよ!!」

辛そうにそう言う大雅。

大雅は結衣ちゃんの事…本気だ。

この時誰もがそう思ったはず。


大粒の涙をこぼして見ている結衣ちゃん。

そりゃ大雅を好きになって当然だよな。



ただ…助けを求めてくる結衣ちゃんを待っていた俺とは違う。

もし、俺が大雅だったら結衣ちゃんが病気になんかなる前に気付き、何がなんでも助けていた。




すると榊さんは口を開いた。


榊「あなたは…結衣様のこと…本気なのですか?」

大「あたりめぇだ。」

即答する大雅。



榊「ですが…兄妹…ですよね?」

そう言った瞬間。

大雅は固まった。


秀「問題ない。俺たちと結衣ちゃんは血が繋がっていないんだからな。」

俺はそうフォローしたつもりだったけど…。
結衣ちゃんも大雅も暗い顔をしていた。



結「……。」

大「……たとえ血が繋がっていようが、なかろうが…俺は絶対命に代えても結衣を守る。」


榊「そんな漫画みたいな事を……。」

榊さんはため息をついた。

でも俺はカッコいいと思った。



そんな事…本気じゃなきゃ言えない。

結衣ちゃんはそう言った大雅を後ろから抱きついた。


結「大雅兄っ……」

抱きついて大泣きしていた。






榊「承知しました。……面白いですね。大雅(あなた)と言う人は…。」

榊さんはそう言って少しだけ初めて笑みを浮かべた。


大「本当か?ありがとう!!絶対だぞ!!」


大雅は笑顔でそう言うと少し驚いた様子の榊さんだったが、それから榊さんが結衣ちゃんに対しての過干渉は無くなった。


そしてゴールデンウィーク中、結衣ちゃんは大雅の側を離れなくなっていた。