≪大雅side≫



大「39.8℃か…下がんねぇな。」

結「ごめんなさ…」

大「謝るな。お前は素直に甘えてりゃいいんだよ。」


俺がそう言うと結衣は涙が止まらなくなった瞳を手で隠すようにして泣いていた。








結衣が体調崩してるとは聞いていたが、ここまで酷いとは思っていなかったから正直ビビった。

俺は昨夜着いたばかりだったけど、もう何日も目を覚ましていないと聞いていたから不安でしょうがなかった。

それと同時にあの執事に腹が立ってどうしようもねぇ……。




大「とりあえず目が覚めたこと琉兄に知らせねぇとな。ちょっと待ってろ。」

俺が病室を出ようとすると結衣は俺の服の袖を掴んで止めてきた。


結「…行かないでっ」

涙でぐしゃぐしゃになった結衣の顔。



今まで結衣の色んな顔を見てきたつもりだ。

でもこんな辛そうな結衣の姿を見るのは初めてだった。


俺が居なくてどんだけ不安だったか。

どんだけ寂しかったか。

どんだけ心細かったか。

どんだけ辛い思いをしたか……。


嫌でも伝わってくるようなその表情に俺は何も言えなくなった。


大「しょうがねぇやつだな…。なら連絡だけするから少し待ってろ。」

と言って俺が携帯を持つと結衣は首を振った。

結「もう少しだけ…2人で居たいっ」

大「そんなの…琉兄に診てもらってその後でもいいだろ?」

俺がそう言うと結衣は下を向きながら続けた。


結「私…頑張るって言ったのに…頑張れなかった。」

震えてる結衣の声。

この時結衣はどんな気持ちだったのだろうか。

何を思っていたのだろうか。

俺には計り知れないほどの気持ちだったに違いない。





結「本当は……もっと頑張るつもりだったの…。大雅兄が安心して大学行けるように…」

大「結衣…」

結「なのに…自分が情けない。心配ばっかりかけて。自分1人じゃ何もできなくて…。どんどん自由が支配されていくようで…どうしていいか分からなかった。」


そう言ってまた泣き崩れる結衣。


俺は何も言えなかった。

逆の立場なら結衣は何かしら声をかけてくれていただろう。

でもこんなに悩んで、苦しんでいる結衣に対してどんな風に声をかけていいのか分からなかった。


適当なことなんて言えない。

無責任なことなんて言えない。


俺ができるのはただ一つ。

結衣の横にちゃんと立てる人間になること。

もっともっと勉強して、早く一人前になって、結衣を幸せにしてやりたい。

今の大学は琉兄も通っていた最先端で医療を学べるところ。

それくらい俺が頑張らなきゃダメだと思っていた。

でも俺は間違えていたのだろうか。


そんな事さえも考えてしまっていた。