≪秀side≫




珍しく自分から俺に会いに来た結衣ちゃん。

それはいいが今日は様子が違った。


秀「あれ。結衣ちゃんから来るなんて珍しいね。なんかあった?」

結「秀兄……私…もう…」

そう言った瞬間倒れた結衣ちゃん。

結衣ちゃんはかなり汗をかいていて、首元に触れてみるとかなり熱い。



秀「結衣ちゃん!?大丈夫!?」

声をかけながら俺は兄貴に電話をかけようと携帯を持った。

すると…

結「お願い。榊さんには言わないでっ」

と涙を流しながら言ってきた結衣ちゃん。

今まで結衣ちゃんがどんだけ苦しんできたことか。

その涙をみて俺は痛感した。


結衣ちゃんが我慢強い子だって分かっていた。

無理してるのも分かっていた。

それなのに何で俺はもう少しはやく手を差し伸べてやらなかったんだ。



結「……大雅…にぃ……。」


意識が朦朧としている結衣ちゃんはそう言った。

たしかに大雅だったらどんな手を使ってでも助けていただろう。

限界が来て俺のところに来るよりもっと前に気付いて対処していただろう。

俺は激しく後悔していた。




そしてそれからすぐに兄貴に連絡をし、学校も早退をさせてもらった俺はタクシーを呼び結衣ちゃんを連れて病院へと向かった。



病院についた瞬間待機していてくれた太陽くんと兄貴。

太「あちゃー。いつかは限界が来ると思っていたけど。」

琉「これはひどい。」

太「かといって俺らに出来ることあんまりないだろうけど。」


そんなことを言いながらストレッチャーに結衣ちゃんを乗せて運ぶ太陽くんと兄貴。


太「結衣ちゃーん。ちょっと熱測らせてね~。」

意識のない結衣ちゃんに声をかけながら治療していく太陽くん。

太「40.6℃……。こりゃひどいな。」

琉「とりあえず採血して調べてみるが…多分精神的なものだろうな。」

太「なら解熱剤使えないね。とりあえず氷枕とかで冷やしておこうか。」


そんな会話をしながら息ぴったりで結衣ちゃんを診ている2人は何だかカッコいい。

ただ見ているだけしかできないだなんて俺は無力だ。

今まで結衣ちゃんを1番近くで見てきた大雅も今の俺と同じ気持ちだったに違いない。

だからこそ大雅は医療の道へと進んだんだ。


今ならその気持ちがよくわかる。



意識を失っているはずなのにずっと泣き続ける結衣ちゃん。





 
太「とりあえず…様子見かな。やれることはやるけど…。秀、お前はあんまり気に病むなよ。」

太陽くんは俺にそういってきた。

秀「え?」

太「俺も何度も結衣ちゃんの様子見るために家に行ったんだ。でも追い返されちまった。」

秀「そうだったんですか…」

太「あぁ。こんだけ制御されてりゃ誰でも嫌になるよな。1ヶ月間か…よく頑張ったよ。」


太陽くんはそう言うと寝ている結衣ちゃんの頭を優しく撫でた。