≪結衣side≫



私の体調もすっかり良くなり再び一緒に登下校できる日々に戻った。


大「結衣~帰るぞ~」

今日もまた大雅兄が今日まで来てくれて一緒に帰る。

こんな日ももう残り数えるくらいしかないんだろうなぁと思ってしまう。



結「大雅兄お待たせっ!」

大「じゃ、帰るか!」

結「うん!あ、ねぇね。大雅兄!」

大「ん?どうした?」

結「駅前に新しいカフェが出来たんだって!そこのショートケーキがとっても美味しいんだって真央ちゃんが言ってたの!」

大「へーあいつもそーゆーとこ行くんだな。じゃあ…時間もあるしこの後2人で行ってみるか?」

結「いいの!?やったぁー!!」

私が飛び跳ねて喜ぶと大雅兄は困ったような顔をして私の腕を掴んだ。

大「行ってもいいけどそんなにはしゃぐとまた喘息出て行けなくなるぞ?!」

結「わー!ごめんなさーい!!」

そう言って私がゆっくり歩き始めると大雅兄が笑った。

大「本当お前は極端だな。」

そして私たちは2人でケーキと紅茶を飲むと大雅兄は5人分のケーキをお土産に買ってくれた。

大「今夜はみんな帰ってくるから俺らは食べてなかった事にして1人1個ずつ食べちゃおっか!」

結「うん!」

どこまでも優しい大雅兄。

私の事、とてもとても大事にしてくれるんだ。

私は常にそう感じていた。



その日の夜。
私がお茶を淹れて兄弟5人で食後に食べたケーキはカフェで食べたのとはまたひと味違う気がした。




そしてそんな時突然鳴り出した電話。

秀「誰だろ。俺出てくるね。」

秀兄が電話を出ると…

秀「お父さんからだ…。結衣ちゃんに代わってって。」

え。私!?なんだろう……。




結「お電話代わりました…」

父『おお!結衣か!!お前に執事を手配しておいた!』

結「えぇ!???」

父『この前大雅がいなかった日1人で倒れていたそうじゃないか。』

結「それは…」

父『私にとっては君も1人の大事な家族だからな。大雅が引っ越してからはその執事が送り迎えと家事等をやってくれるからな。』

結「大丈夫です!そんなの…」


そう言ったけどもうすでに電話が切れていた。


この人はとことん自分勝手だ。

人の意見を何一つ聞いてくれない。


執事だなんて大袈裟すぎるよ。

これからどうなっちゃうんだろう。



そして…一体どんな人なんだろう。

ものすごく不安だ。




受話器を置いて再びリビングへ戻ると私はみんなに話した。

琉「あの親父が考えそうな事だな。」

秀「結衣ちゃんはそれでいいの?」

結「うーん……」

瑛「でも玄関で何時間も倒れてるよりはマシなんじゃねーの?」

大「え!?倒れてたのか!?」

結「それは……」

大「でも…1人にしておくよりは確かに誰かがいた方が俺は安心するけどな。」


そう少し暗めに言う大雅兄。

執事だなんて……


そんなの今までの生活からはとても考えられない事だ。

うまくやっていけるのだろうか。

本当にどうしよう。



私の頭の中は不安でいっぱいだった。