その理由もなんとなく察していたとは思う。だから、ギリギリまで手を出さずに見守っていたということだ。

忠晴、ありがとう。



……俺が、ゴルァァ雑魚連中のケンカを、敢えて売り買いしたその理由とは何か。

えーと、まあ。それは。

俺自身のしがないプライド。

要するに。たまにはなずなの前でカッコいいところを見せてみたかったのです。




「じゃあ、そういうことで後はよろしく」

「承知しました。仰せのままに」

「……あ、そうだ。あいつらの中にハーブの匂いする奴いた。警察にも連絡した方がいいんじゃない」

「まあ、それはそれは。しかし、脱法だろうがなんだろうが、橘の前ではそんなことはちっぽけなことでございますけどね」

「うん」



それだけを簡潔に伝えると、忠晴は空き地の外に向かって手を挙げて合図を出す。

すると、空き地の側に複数停められていた黒塗りの車から速やかに登場したのは、サングラスにスーツ姿の男たちだ。

彼らはうちのSP。

今日はそこそこ連れてきたな。十人ぐらいいるわ。

敏速に小走りで行くその先は、先程まで俺とやんややんやモメていたゴルァァ連中の方。

SPの登場で、向こうは再び騒がしくなっていた。