跳ねる気持ちを抱えてバスを降り、せっせと歩くその足取りも軽く弾んでいるような気がする。

見慣れた景色もいつもより鮮やかに見えるし、まだ夏の暑さが残るこの日差しだって不快じゃない。

なずなと会えるなら、もう何でもいい。

って、要するに。浮かれポンチなのである。どうもならないおめでたいヤツ。



お馴染みのペンタグラムが見えてきた。ただいま営業中、咲哉さん元気にしてるだろうか。

しかし、今回は立ち寄らず、横目に通り過ぎる。

到着したマンションのエントランスでインターホンを押して。

液晶画面越しでも、ほんの一瞬でも、顔が見えて声が聞けたらホッとして。

一秒でも早く会いたいから気持ち急いでエレベーターに乗って、辿り着いたその部屋の扉を開く。

開いた扉の向こうには……。



「おっ。おつかれ。早かったな」



いつものまつ毛バサバサ濃いメイクに、明るい茶色の巻き髪ヘアで。

パイル地のキャミソールとショートパンツという部屋着姿で、掃除機を片手に持っている。

いつもと変わらない、なずなが……そこにいた。