王立魔法学園の隣に建てられている学園寮は、貴族が住むだけあってとても広く、立派な建物だった。不満があるとしたら、伝統ある建物なので、少々古いくらいか。
 建物の東側が男性。西側が女性と分けられていて、基本的にそれぞれの棟を行き来することはできない。
 セシリアに宛がわれた場所は寮の中でも広く、応接間と寝室、浴室。そしてふたりの侍女の寝室と、守護騎士であるアルヴィンの部屋があった。さすがに寝室は別だが、守護騎士は男性であっても主と同じ場所に住む。公爵家の屋敷にいたときからそうだったから、セシリアもとくに気にならない。
 異性の守護騎士を持つ者は、皆同じだろう。
 公爵家から持ち込んだ絨毯や調度品はすでに配置してあり、クローゼットには学園の制服が何着か、それと夜会やお茶会に参加するためのドレスもたくさん並んでいた。
 セシリアは侍女が淹れてくれたお茶を飲みながら、配布された魔法学園の教科書にゆっくりと目を通していた。
「うーん、やっぱりほとんど勉強してしまったことばかりね」
「だから、そんなに勉強は必要ないと言っただろう?」
 セシリアの部屋に設置されたソファーに、アルヴィンはラフな服装で座っていた。彼がそうやって寛いでいると、これからはここが自分の部屋だという実感が出てくる。
「そうよね。でもなんか受験って聞くと、頑張らなきゃって思ってしまって」
 これも前世の記憶の弊害かもしれない。