「そうね。もう三年ほどは、お父様ともほとんど会わないもの。あまり気にすることはないわね」
 ようやく笑みを浮かべると、アルヴィンはあきらかに安堵した様子だった。
(お父様もこうして、お母様のことを常に気にかけているのかしら?)
 そんなことを思ってしまい、ひとりで頬を染める。
(違う、わたしったら何を考えているの? わたしたちは、そういうのじゃなくて……。互いに納得した上での、偽装の恋人だからね)
 誰にいいわけをしているのかもわからないまま、必死に自分に言い聞かせる。
 ひとりで恥ずかしがるセシリアを、隣にいたアルヴィンは慈しむように見つめていた。