それでも、歩み寄りたいとは思わない。
 セシリアが望むのは兄や家族との和解ではなく、自分とアルヴィンの平穏な生活だ。それが得られるのなら、他のものはすべて取り上げられてもかまわない。
 でも、ここがあの恋愛ゲームを元に作られているのだとしたら、この世界はヒロインであるララリのものだ。
 どうしてもそう思ってしまい、不安になる。
(もし、どんなに頑張っても無理だったら? ゲーム補正みたいなものが働いて、どんなに生き方を変えても破滅しかないとしたら……)
 考えすぎかもしれない。
 でも、どうしてもその考えが頭から離れない。
(駄目ね。あの子と会った日から、どうも心が不安定だわ)
 セシリアは立ち止まった。
 ゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着かせようとする。
「セシリア、どうした?」
 背後を歩いていたアルヴィンが、心配そうに覗き込んできた。
「ねえ、アルヴィン。もし未来が変えられなかったら……」
 気が付けば、そう口にしていた。
 言ったあとに、後悔する。
 何も知らない彼にそんなことを言っても、どう答えたらいいかわからないはずなのに。
「そのときは、セシリアを連れてこの国を出る」