その数日後。
 セシリアはアルヴィンを連れて、父の執務室に向かっていた。
 魔法学園に入学することが正式に決まったので、明日から学園の寮に入ることになる。
 その前に、父に挨拶をしなければならなかった。
 すでに侍女たちが先に寮に向かっていて、セシリアが暮らしやすいように部屋を整えてくれていた。もちろん、守護騎士であるアルヴィンもセシリアの傍で暮らすことになる。
 これから三年間は、長期休暇を除いたほとんどの時間を学園の寮で過ごす。兄も寮で暮らしているため、これからしばらくは、この屋敷には父と母だけだ。
(まぁ、お父様にしてみたら、お兄様とわたしがいなくても、お母様がいればそれでいいんでしょうね)
 セシリアだって、もう十五歳だ。
 いつまでも、子供ではいられない。
 今となっては、両親の仲が良いのは、悪いことではないと思うようになっていた。
(でもお兄様は複雑でしょうね……)
 兄は今でも自分を嫌っている。
 彼が攻略対象だったときの記憶が戻ったセシリアには、その波乱万丈な人生に同情する気持ちもある。