「そうか。これからのことが心配なら、ずっと俺の後ろに隠れていろ」
「え?」
「世間知らずで気弱なお嬢様になって、誰とも接しなければいい。俺がすべて対応する」
「そんなこと、できないわ。あなたを盾にするなんて」
「俺はお前の守護騎士だ。それに、セシリアも俺を守ってくれると言っただろう?」
「え?」
「恋人が常に背後に寄り添っている男に、近寄る女はいない」
「あ……」
 アルヴィンを令嬢たちから守るために、恋人同士という設定にしたことを思い出す。
 たしかにヒロインはセシリアではなく、アルヴィンに声を掛けてきた。
 でも彼は、乙女ゲームの攻略対象ではない。だから近寄らないでほしいと、強く思う。
「互いにそれが一番……なのかしら?」
「ああ、そうだ。だからセシリアは絶対に、俺から離れないように」
 彼はそう言うと、まだ涙の跡が残る頬に触れる。
「俺はただの守護騎士だが、学園内では身分は不問という規則がある。たとえ王太子が出てきても大丈夫だ」
「……うん。でも、無理はしないでね」
 こうなったら誰も近寄れないくらい、ぴったりと寄り添っていようと思う。
 それが互いを守ることにも、繋がるのだから。