(どうして今まで気が付かなかったんだろう……)
 前世の記憶があるのは確かだが、すべてを覚えているわけではないらしい。
 思い出してみれば、前世の自分は根っからのゲーマーで、暇さえあればゲームばかりしていた。ちょうどあの頃お気に入りだったゲームが、目の前にいる少女がヒロインの、恋愛系ゲームだった。
 ヒロインの、ララリ・エイター男爵令嬢。
 庶民として町で暮らしていた彼女は、十五歳のときに母親が亡くなり、その遺言で父親が貴族だったことを知る。探し当てた父親は、ララリが魔力を持っていると知ると、すぐに彼女を正式に娘として迎えた。
 理由は、この国の事情で知った通りだ。
 魔力のある庶子は、魔力を持たなかった嫡子よりも優先されるのだ。
 それから一年後、ララリはエイター男爵家の娘として、王立魔法学園に入学することになる。
(ああ、そうだわ。これからわたしたちが入学する、この学園だったわ……)