学生の間くらい、静かに穏やかに暮らしたい。
 そう思っていたセシリアの背後から、声を掛けてきた者がいた。
「あ、あの」
 振り返ると、小柄な少女が頬を染めてこちらを見ていた。
 守護騎士を連れていないので、子爵か男爵の娘だろう。彼女の視線は、まっすぐにアルヴィンに向けられている。
「魔力測定のとき、凄かったです。わたし、感動してしまって。あんなにすごい魔力、初めて見ました」
 澄んだ高い声。
 まっすぐな銀色の髪は、背中を覆うほど長い。
 白い肌に、華奢な身体つき。
 思わず守りたくなるような、可愛らしい少女だった。
 だが、主を差し置いて守護騎士に話しかけるのは、とても失礼なことだ。
 しかもセシリアは王家の血を引く、ブランジーニ公爵家の令嬢である。
 まず主であるセシリアに挨拶をし、その許可を得てから、守護騎士に話しかけるのがルールだ。
 でも守護騎士のいない彼女は、そういう貴族のルールに疎いのかもしれない。
 もし彼女が無知のままで、他の人に同じことをしてしまったら、大変なことになる。
 注意をしなければと思ったセシリアは、ふと思った。 
(あれ……。この子、知っている気がする。どこかで見たような……)
 前世で好きだったゲームの主人公に似ている。
 そう気が付いた瞬間、セシリアは青ざめた。