男爵、子爵家の者は守護騎士がいないのでひとりだが、他は皆、自分の守護騎士を従えている。そのまま経過を見守っていると、ばらばらだった新入生たちは、次第に人の輪を作っていく。
(あれは、ルース侯爵家の長女と、リーサリー伯爵家の次女ね。たしかふたりは縁戚だったはず。向こうにいるのは、ビリサ伯爵の嫡男。その守護騎士はゴーダ子爵の息子で、彼の傍にいるのは、そのゴーダ男爵の縁戚のラーラン子爵の娘かしら?)
 縁戚関係や、守護騎士の縁で、その輪がどんどん繋がっていく様子を、セシリアは静かに観察していた。
「セシリアはいいのか?」
 背後のアルヴィンにそう尋ねられ、こくりと頷く。
「ええ。ひとりの方が気楽だもの」
 今のところ、仲良くなりたいと思うような人はいなかった。
 それにブランジーニ公爵家の縁戚といえば、王太子とか王女になってしまう。先ほどの様子を見る限り、なるべく近寄りたくない。
「そうだな。俺も、ふたりきりの方がいい」
 アルヴィンは耳もとでそう囁くと、セシリアの金色の髪に触れた。優しく撫でられて、思わず笑みを浮かべる。
 これから嫌でも権力闘争に巻き込まれていくのだ。