「でもわたしは、この腕輪のお陰で大丈夫だと思う。でもアルヴィンは、わたしにこれを譲ってくれたせいで、他の令嬢から狙われるでしょう? だから、わたしの恋人だって言えば、手を出す人もいないかと思って」
「……」
「ご、ごめんね。嫌だった?」
「そんなことはない。ただ、色々と複雑なだけだ」
 アルヴィンは大きく溜息をつくと、手を伸ばしてセシリアの金色の髪に触れた。
「それより、いいのか? 俺と恋人同士になってしまえば、もう学園で恋をすることはできないぞ?」
「うん。それは別にいいかなって。なんか、貴族同士の恋愛って打算的で、あまり楽しくなさそうだし」
 前世が普通の一般人だったからか、窮屈に感じてしまう。
 相手を好きになっただけではだめなのが、貴族同士の恋愛だ。
 昔のように親が勝手に婚約者を決める時代ではなくなったが、それでも向こうの家柄、縁戚。さらに魔力の強さなどを考え、本人だけではなく周囲の人たちを納得させなくてはならない。
 それに正直、前世だって恋人はいなかったけれど、毎日充実していた。学園を卒業するまでは、恋だの婚約だのは保留にしておいてもいいと思ったのだ。
 アルヴィンは少しの間考え込んでいたが、やがて頷いた。