よい考えだと思った。
 でもアルヴィンはその言葉に絶句し、手にしていた魔法書を取り落とすほど動揺していた。
 綺麗なスミレ色の瞳が、驚愕の色を浮かべている。
 こんなにも動揺した彼の姿は、今まで一度も見たことがない。提案したセシリアも、つい慌ててしまう。
「もちろん偽装よ? そのほうがお互いに生活しやすいと思うから」
「偽装……。偽装か。いや、セシリアを守るためなら構わないが」
「わたしというより、むしろアルヴィンのためかな?」
「俺の?」
「うん。あれからわたしなりに色々と調べてみたのよ。今、この国ではね、貴族でも魔法を使えない人が増えているの。焦りもあるのか、ちょっとひどい有様みたいでね」
「ああ、知っている。だからこそセシリアの魔力を抑えなくては思った。あのままでは危険だと思ったからな」
「……うん。そうね」
 本来のセシリアは、今のアルヴィンよりも強い魔力を持っているらしい。
 国がこんな状況では、学園を卒業するよりも先に、結婚させられていたかもしれない。