(でも念のため、こうした方がいいよね?)
 あることを思いついたセシリアは、隣で分厚い魔法書を読んでいるアルヴィンに声をかける。
「ねえ、アルヴィン」
「……何だ?」
 魔法書から目を離さないまま、アルヴィンはそう返答した。
 守護騎士ならば、主の呼びかけにはすぐさま答えて畏まるのが普通だが、こういう関係を望んだのはセシリアだ。とくに気にすることなく、言葉を続ける。
「もうすぐ学園に入学するよね。寮にも入るし、しばらくは学園での生活がすべてになると思うの」
「……ああ、そうだな」
「三年間、平穏に過ごすためにも、わたしたち、恋人同士って設定にしない?」
「……、……は?」
 ブランジーニ公爵令嬢の守護騎士という立場は彼を守ってくれると思うが、それでも暴走する令嬢もいるかもしれない。
 恐ろしいことだが、前世では既成事実を偽装してまで意中の恋人を手に入れようとした女性もいた。愛のために暴走する女性が、この世界にもいないとは限らない。
 だがさすがにセシリアの守護騎士であり、さらに恋人でもあるなら、手を出そうとする者はいないと思いたい。
 そう思ったからこその、提案。