しみじみと、そう思う。
 そうでなければ百年前の彼のように、誰かを愛し、この世界に生きる覚悟が決まるまで、まったく使えないままだったかもしれない。
 これで試験も大丈夫だと、ほっと胸を撫でおろす。
 一応魔法学園にも試験があり、それに合格しないと入学することができない。
 昔は試験などなかったようだ。
 だがこの国では、年々貴族の持つ魔力が低くなっているらしい。
 噂でしかないと思っていたが、詳しく調べてみると、それは事実らしい。
 さらに、生まれは間違いなく貴族なのに、まったく魔力を持たない者も生まれるようになっていた。だからこそ試験で本当に魔力があるのか、たしかめる必要が出てきたようだ。
 国としては、国力の低下に繋がる由々しき事態である。
 そのため、魔力の強い者は愛人を何人も持つことが当たり前になっているらしい。そして生まれた子供はたとえ庶子であろうと、魔力があればすぐに本家に引き取られる。
 セシリアの父も、かなり魔力が強かった。
 それなのに娶った妻はふたりだけで、ひとりはもう亡くなっている。