「そうね。期待しておくわ」
「誰か、心当たりはいないのか? 気になる相手とか」
 からかうように言われて、セシリアは笑う。
「いないわよ。だって今のわたしが知っている年の近い異性なんて、お兄様とアルヴィンくらいよ?」
「……」
「アルヴィン?」
「いや、それならそれでいい。まだ勝負はこれからだ」
 何の勝負か気になったが、彼があまりにも決意に満ちた顔をしていたので、何も言えなかった。
(とにかく、今は勉強のほうを頑張ろう。魔法は、これから徐々に頑張っていくしかないわね)
 百年ほど前に、この世界に生きた彼のことを思いながら、セシリアは教科書を開いた。

 それから二か月。
 セシリアは毎日のように勉強に励み、魔法の知識だけは完璧に身に付けることができた。
 それに、今までならまったく制御できなかった魔力が、この腕輪のお陰で少しの間なら制御できるようになったのだ。
 これで多少の魔法ならば、問題なく使えるかもしれない。
(やっぱり、マンガやゲームで魔法を知っていたからなんだろうなぁ)