天使のように美しかったまだ十歳の子供を、あんな状態にするなんて信じられないと思っていた。
 でも、今となっては他人事ではない。
 あのまま学園で魔法を学んでいれば、いずれセシリアの魔力が尋常ではないと知れ渡っていただろう。
 そうなったら、どうなっていたか。
(……恐れられていた。誰もが遠巻きに見ていて、けっして近づこうとしなかったわ)
 いつもの予知夢のようなものが、頭に浮かぶ。
 その中では、セシリアはあまりにも強すぎる魔力のせいで、王太子の婚約者となっていた。
 でもそのセシリアは高慢で、自分よりも魔力の低い者を見下していた。
 自分の兄や、王太子の妹である王女に対しても、ひどい態度をとっていたくらいだ。取り巻きのような者はいたが、当然のように友人と言えるような者は、ひとりもいなかった――・
「ありがとう、アルヴィン」
 自然と、彼に対してそう言っていた。
 この腕輪がある限り、そんな未来はこないと確信することができる。
「お陰で、普通の学園生活を過ごすことができそうだわ」
 アルヴィンはセシリアの感謝に笑顔で答えたが、ふとその表情が曇った。
「……少し、気になることがある」