「俺はお前の存在を隠すために、なるべく目立つ必要がある」
「え?」
 思ってもいなかった言葉に、思わず首を傾げる。
「隠すって、どういうこと? わたしのことは、みんな知っていると思うけれど」
 ブランジーニ公爵に娘がいることは、貴族なら誰でも知っていることだ。今さら隠しても意味はない。
「いや、隠すのは、お前の才能だ。あの家庭教師が無能でよかった。あの程度では、セシリアがどれだけ強い魔力を持っているか、わからなかっただろう」
「無能って……。先生は一応、優秀な方よ?」
 いきなり家庭教師の悪口を言い出したアルヴィンに戸惑い、援護する。でもアルヴィンは眉をひそめた。
「魔法を使わなければ相手の魔力を測れない者を、優秀だとは言えない。だが、今回はそれが幸いだった。セシリアのことが正しく伝われば、大変なことになっていた」
「少し、大袈裟よ? たしかに昔から魔力は高いかもしれないと言われていたけれど、実際、まだきちんと制御することもできないの。アルヴィンのほうがすごいと思うわ」