権力を振りかざし、傲慢に振る舞う者。己の将来のために、邪魔者を始末しようとする者などがいて、過去にもたくさんの事件が学園で起こった。
 しかも今、学園には王太子が在籍している。
 王太子妃を狙う女性達にとっては、まさに正念場。どんな手段を使っても、彼を射止めたいと思う女性は多い。
 おそらくセシリアも、無関係ではいられない。
 セシリア自身には王太子妃に興味はなくとも、公爵令嬢という立場を勝手に危険視して、敵意を向けてくる者がいないとは限らない。
 そんな状況なのだ。
 正直に言えば、アルヴィンが傍にいてくれるのはとても心強い。
 でもそのために、彼の隠し事が明らかになり、その身が危険に晒されるなんて嫌だ。
「そんな覚悟はいらないわ。わたしのことより、もっと自分のことを考えて」
「そうはいかない。俺はお前の守護騎士だ」
「あなたにそんなことをさせるために、連れてきたわけじゃないわ」
 守護騎士に任命したのは、アルヴィンを傍に置きたかったからだ。
 傷つき、孤独な瞳をしていた少年を、この手で守ってあげたいと思った。
 ただ、それだけだったのに。