(これなら、魔力が強すぎて暴走することも、目立ってしまうこともないわ)
 兄よりも少し高いくらいなら、高位の貴族の中ではむしろ平凡なほうだ。魔力が高いという理由で、王太子の婚約者になってしまうこともない。
 こんな夢のような魔道具があるなんて、思わなかった。
「ありがとう、アルヴィン。これで学園に行く不安はなくなったわ」
 嬉しくて、思わず彼に抱きついた。アルヴィンはそんなセシリアを優しく受け止めてくれる。
「アルヴィンと三年も離れるのは不安だけど、これで頑張れそう」
「何を言っている。俺が、お前をひとりにするはずがないだろう?」
「え?」
 驚いてアルヴィンの顔を見上げると、彼は手を伸ばして、セシリアの金色の巻き毛を愛しそうに撫でた。
「学園にはお前の兄もいるのに、ひとりで行かせたりはしない」
 彼を連れて行くために、兄の存在が怖いと口にしたせいか、アルヴィンは兄のユージンを警戒している。
 でも、たしかにあの予知夢では、最後にセシリアを殺させたのは間違いなく兄だ。
 警戒しておくのは、間違いではないのだろう。