アルヴィンはセシリアの守護騎士だが、態度や口調を改めることを、守護騎士となったその日に禁じた。
 敬語を使われると何だか距離を感じて寂しかったし、彼とは主従ではなく、対等な関係でいたい。
 公爵令嬢としては異端だが、セシリアに関心のない両親が、それを咎めることはなかった。 
「ううん、大丈夫。ただ、春になったら学園に入学しなくてはならないから、少し不安になっただけ」
 差し伸べられた手を握りながら、そう言って笑う。
 セシリアの魔力はかなり高い。
 十歳のときにはもう、同い年の王女に匹敵するくらいと言われていたが、あの頃よりも成長した今、魔力もまた強くなっていた。
 だが魔力が強くなるにつれ、制御もまた厳しいものになっていた。その方法を学ぶために学園に入学するのだとわかっていても、やはりこのままでは不安だ。
 それに、兄よりも魔力が高いことが知られてしまえば、周囲が騒がしくなるに違いない。
(本当にあの予知夢のような記憶のように、王太子殿下の婚約者になっちゃったらどうしよう……)